インフルエンザなどでは予め予防接種をすることで、感染を防ぐことができる場合があります。
しかし風邪には予防接種はありません。なぜなのでしょか?
予防接種のちょっとした説明
予防接種はワクチンを体内に投与することを言います。
体では免疫システムが働きますが、この免疫は未知のウイルスと戦うのが下手です。予めウイルスの素性を知っているとうまく戦うことができます。
例えば一度掛かったインフルエンザには再度感染することがないのは、免疫がそのインフルエンザウイルスとの戦い方を覚えたことも意味します。
この仕組みをつかって、毒性を弱めたウイルス、不活性化したウイルス(死滅させたウイルス)、ウイルスの一部(タンパク質)などを投与して、予めウイルスとの戦い方を免疫システムに覚えさせるのが予防接種の仕組みです。
すべての病気でワクチンが作れるわけではありませんが、いくつかの病気では予防接種のおかげで感染せずに済むことが多いです。
ウイルスの型ついてのちょっとした説明
ウイルスはその種類だけでなく、同じ種類のウイルス自体にいろんなバージョンが存在していることがあり、それをウイルスの型と呼んだりします。
型にはさまざまな種類がありますが、一般的には同じウイルスでも型が違うと、ワクチンもその型用を作らなくてはなりません。
つまりあるウイルスの感染を防ぎたい場合は、そのウイルスの型すべてに対してのワクチンを作る必要が出てきます。
型が非常に多いウイルスもあれば、型がほとんど無いウイルスもあり、ウイルスごとに事情がことなります。
インフルエンザの予防接種の場合
インフルエンザも一般的には風邪の一種として扱われますが、ここでは一般的な風邪とは分けて説明します。
インフルエンザウイルスの場合、ウイルスの型は現状では大きく分けてA型、B型、C型の3つが存在します。
そしてインフルエンザ流行に関わるのはほとんどの場合A型、B型になります。
A型、B型も細分化すると相当な数の型になりますが、流行する型の大枠は
A香港型、Aソ連型、B山形系統、Bビクトリア系統
とされており、現在のインフルエンザ4価ワクチンもこれらの型が元になっています。
これらの型も毎年少しずつ変化してしまうので、去年の予防接種が今年まで効くということは殆ど無いと考えたほうが良いです。
インフルエンザの場合ウイルスの発生場所や特性などから次の年に流行するウイルスの種類(株といったりする)が予測できる場合があります。
ワクチンはできるだけ次の年に流行するであろう型を想定して作られます。
つまりインフルエンザの場合はもともとの型が流行する型を想定してワクチンが作られる体制になっているということなのです。
風邪の予防接種がない理由
風邪の場合、一口に風邪ウイルスと言っても、数種類のウイルスが関係しており、1つのウイルスごとにかなり多くの型が存在しています。
例えば風邪の主なウイルスであるライノウイルスは100程度の型が存在しています。この辺の事情はインフルエンザとあまり変わりませんが、風邪の場合、どの型が流行るかの予測が非常に困難です。
予測ができないので、もし風邪を予防したいと思ったら、ライノウイルスだけでも100種類のワクチンを投与しなくてはならなくなります。
その他にも風邪(かぜ症候群)を引き起こすウイルスにはアデノウイルス、RSウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルスなどが存在しています。これらのウイルスもそれぞれに複数の型をもっています。
このように風邪(かぜ症候群)は様々なウイルス・ウイルスの型が存在する上に、どのウイルスに感染するか予測が困難であることが、予防接種を現実的でなくしています。
予防接種の意味
また一般的な風邪は症状がインフルエンザと比べて、重症になることが少ないので、予防接種をしてまで備える必要が無いともいえます。
一方インフルエンザは感染すると死亡にいたる場合もあるほど重症化する可能性もありますので、予防接種で備える意味があると言えます。
対リスク、対費用を鑑みた場合にも風邪に対する予防接種はあまり現実的ではないと言うことのようです。
まとめ
風邪の予防はやはり、手洗いうがいが基本のようです。予防接種も魅力的ではありますが、100%感染を予防できる訳ではないので、過度の期待は禁物です。