契約が必要になる場面で…
契約書などで名前をしるすことを署名や記名と言いますが、どのように使い分ければいいのでしょうか?
署名は「名を署す」ことで、自分の手で名前を書くことを意味します。つまり自分の字でペンで書いた名前が「署名」ということです。
記名とは「名を記す」ことで、意味として署名とほとんど変わらないのですが、署名と分けて考える場合は、自分の手によらずに書かれた名前を指します。例えば印刷された名前、ゴム版で押された名前、他人の代筆などは記名と呼ばれます。
署名・記名を整理すると
それぞれの意味は以下のようになります。
- 署名 自分自身の手で筆記用具をつかって名前を書くこと
- 記名 自分自身の手によらずとも印刷やゴム版、代筆などで名前を記すこと
記名や署名とハンコの関係
契約書には本人の意思が重要
契約書は重要な効力を発するものですから、ちゃんとその契約書を認めていますよという確認が必要になります。
そのために、サインをしたり、ハンコを押したりします。
しかし、先ほど説明した記名だと、本人の意思が若干希薄になります。自分で書かなくても名前が入ってしまうことがあるためです。
そのため、記名を補うために押印をすることで記名を強化することができます。
ハンコを使って署名の効力
これは平成17年の会社法の成立で整理された新商法32条に「この法律の規定により署名すべき場合には、記名押印をもって、署名に代えることができる」という規定が盛り込まれた為です。
つまり現在では記名+押印で署名と同じ効力を発することができるようになっているのです。
ハンコを契約で使用する日本の商慣習が考慮された結果のようですね。
また、ハンコを同時に用いるのは記名の時だけでなく、署名の場合もあります。特に重要な契約などの場合は署名と同時にハンコを用いる場合もあります。
契約の有効性・証拠能力の順序
署名・記名とハンコを合わせた場合、いくつかのパターンができますが、それぞれ契約の有効性や証拠能力に差が出来てきます。一般的には以下の順で有効性・証拠能力が高いとされます。
- 署名捺印(しょめいなついん) 契約有効・最も高い証拠能力
- 署名 契約有効
- 記名押印(きめいおういん) 契約有効
- 記名 記名だけでは有効とは認められない
捺印と押印の違い
捺印と押印にははっきりとした意味の違いはありません。単独で使用する場合はどちらも「ハンコを押す」と言う意味です。
しかし、先ほどの署名、記名と同時に使う場合に使い分けをしているのが習慣のようです。
- 署名とハンコを同時に用いる場合 署名捺印(しょめいなついん)
- 記名とハンコを同時に用いる場合 記名押印(きめいおういん)
というのが一般的です。
署名押印と言っても意味的には間違えではないですが、習慣とは異なるので、できるだけ署名捺印(しょめいなついん)・記名押印(きめいおういん)とした方が良いかと思います。
ちなみに法律的にハンコを押すことは「押印」を使っています。
まとめ
私達の周りには意外に契約書が沢山あります。家の契約、水道光熱の契約、携帯電話の契約、クレジットカードの契約、ローンの契約などなど、なにかのサービスを使う時にはほとんどの場合、契約が必要になります。
署名・記名とハンコがどのような効力を発するのか覚えておいても損は無いと思います。