<-->single

実用的でかつびっくりな科学反応「テルミット反応」

  • 2016/08/24 10:56:37
目次
  • 1:テルミット反応の内分け
  • 2:鉄道のレールの溶接
  • 3:まとめ

いきなりですが、鉄道のレールは溶接されてくっついていますよね?

溶接には意外と大掛かりな設備が必要です。どうやって野外に溶接の設備を揃えているのでしょうか…。

実は鉄道のレールは「テルミット反応」を用いて溶接されています。

まずはテルミット反応がどんなものか動画を見てみてください。

youtubeで閲覧できる動画を2つほど紹介します。

テルミット反応の内分け

テルミット反応は酸化鉄(酸化銅などでもできる)とアルミニウムの混合物に火を付けた時の反応を言います。

具体的には酸化鉄粉末とアルミニウム粉末を8対3で混ぜます。

酸化鉄はいわゆる鉄サビです。つまり鉄サビ粉末にアルミニウム粉末を混ぜるのです。

この混合物に熱を加える(火を付ける)と酸化還元反応が始まります。

強い熱と強い光を発する激しい反応になります。バチバチと火花が出ることもあります。

実験時には着火用にマグネシウムリボンを使うのが多いようです。いわゆる導火線です。

アルミニウムは金属酸化物を還元するのですが、このときものすごい熱を発します。

熱量は1モルで850kJ程度ですから相当な高温になります。この熱量は鉄を溶かす温度を得ることが可能です。

鉄は1500〜1600℃以上で溶けるので、テルミット反応の温度の凄まじさがわかるかと思います。

鉄道のレールの溶接

冒頭で鉄道のレールの溶接にテルミット反応を使うと言いました。これは日本でも海外でも多く使われています。

日本のJRではテルミット反応で溶接することを、「ゴールドサミット溶接」と呼ぶ場合もあります。

テルミット反応は一度火をつけると反応熱だけで鉄を溶かすことができ、大掛かりな設備が必要ありません。

そのため野外で高温が必要なレールの溶接に向いているのです。

またテルミット反応では溶解した鉄が勝手に下に動くので得たい鉄を容易に選り分けることができます。

つまり、上から下に鉄を流し込む仕組みを作ってあげれば、欲しい場所に鉄を流しこむことができるのです。

さらに、テルミットは炭素燃料(化石燃料のこと石炭や石油など)を必要としません。

炭素が鉄に混ざると高度が増す場合がありますが、脆くなる原因にもなります(粘りのない鉄になる可能性がある)。

炭素が混ざらないので溶接の結果を良くする側面があります。

実際にレールの溶接を行っている動画があります。JRでの演習と海外の実際の線路での溶接模様です。

レールの接合部に移動式の鋳型を当て、上からテルミットで鉄を流し込んでいる様子がわかります。

まとめ

身近な素材で簡単に高熱を出す反応ができるのは驚きですね。レールの溶接など実用的で社会の役にたつテルミット反応ですが、反面反応の激しさは兵器にも転用できます。焼夷弾、テルミット爆弾などテルミット反応を使った武器も多くあります。

できれば人の役に立つように使ってもらいたいですね。

ちなみにアルミニウム粉末はある程度の細かさになる場合、危険物として扱われます。