ArchLinux
あーちりなっくす
ArchLinux
https://www.archlinuxjp.org/
近年非常に人気のあるディストリビューションです。特にLinux環境を仕事で使うプログラマに人気があります。
インストールにおいては手厚いインストーラはなく、ストレージのパーティション作成やファイルシステムの作成、マウントなどはユーザ自身で行う必要があります。この時点ですでにLinux初心者には近づけないオーラを放っています。
それでもベースシステム(ArchLinuxではbaseパッケージと呼ばれています)をインストールするためにスクリプトが用意されてはいます。
実質これがインストーラの役割を果たしています。
そのスクリプトを使えば、とりあえずLinuxカーネルや必要最低限のツールやパッケージがインストールされますが、起動してLinuxとして使うためにはネットワーク設定、ロケール(使う言語や地域によっての単位など)設定、時計合わせ、ブートローダーのインストールと設定などをコマンドを使ってユーザ自身が行う必要があります。
またArchLinuxはGUI(グラフィックユーザーインターフェース)環境は最初からありません。
DebianやUbuntuやmintなどでは最初からGUIがサポートされており、ユーザが意識しなくても初回の起動からGUI環境が立ち上がります。
しかしArchLinuxは初期状態ではCUI環境のみです。これはGUI環境しか使えない人には大きな壁です。
しかしこのためArchLinuxはとても軽量です。何せ必要最低限のパッケージしか導入されていないからです。
baseパッケージをフルでインストールしても800MB程度と昨今の主要ディストリビューションと比べてもかなり小さい容量で済みます。(もちろんこれはGUI環境に関わるパッケージが一切インストールされないからです)
またメモリも256MByteあれば起動します。超軽量級ディストリビューションと言えます。
もしGUIを使いたいなら、GUI環境のインストールと設定は自ら行う必要があります。
これにはグラフィックカードを調べ、適切なドライバをインストールし、Xサーバをインストールし、さまざまな候補が存在するウィンドウマネージャ(GUI環境でのウィンドウ生成)やディスプレイマネージャ(グラフィカルログインのためのソフト)または付随するツールなどをインストールし設定する必要があります。
このGUI環境を作り上げるのは初心者にとってはとてもハードルになるでしょう。
ArchLinuxを使う利点
- 必要最小限の状態から自分でカスタマイズができる(余計なパッケージなどが入っていない)
- 軽快に動く、古いパソコンでも立ち上げることが可能
- インストールや使用に際してユーザ自身での設定を行う必要があるのでLinuxの勉強になる
- ローリングリリース(常に最新版)なのでバージョンが存在しない
GentooLinux
じぇんつーりなっくす
GentooLinux
https://wiki.gentoo.org/wiki/Main_Page
GentooLinuxはArchLinuxよりも初心者お断りのディストリビューションです。
ArchLinuxも初心者には難しいですが、それでもインストールするべきパッケージが用意されていたり、スクリプトがあったりして、だいぶインストールしやすいようになっています。
しかしGentooLinuxの場合、インストールすべきパッケージは自らソースコードのコンパイルする必要があります。
たとえばUbuntuなどでもソースコードをコンパイルしてインストールする場面はありますが、多くの場合、Ubuntu側で用意してくれているパッケージ群からインストールをすることが多いかと思います。
あらかじめコンパイルされたバイナリ(実行可能になった状態)をインストールするのはユーザにとってはとても楽ですからね。
なぜGentooではコンパイルを行うかですが、これは「最適化」に尽きると思います。
Linuxの核となるLinuxカーネルには様々な機能が存在しています。これらの機能はON・OFFしたり挙動を変更したりすることが可能です。
「ON・OFFしたり挙動を変更したり」はカーネルパラメータを使って設定を行います。このカーネルパラメータものすごく膨大な量が存在します。
初心者でもつかえるUbuntuやDebianなどのディストリビューションの場合、カーネルパラメータはあらかじめ「使い易いであろう」設定がなされています。その設定がディストリビューションの違いにもなったりしています。
しかし、Linuxを深く使っていくと、ディストリビューション側で設定してくれているカーネルパラメータを変更したい場面が出てくる場合があります。
「処理速度を上げたい」、「セキュリティを確保したい」、「OFFになっている機能をONにしたい」などの要望がでてきます。
こうなってくるとカーネルのソースコードをダウンロードして自分でカーネルパラメータを設定しコンパイルすることになります。(カーネル起動時にオプションを設定することで変更できるカーネルパラメータもあります)
またソフトウェアによってはカーネルパラメータと密接に関わっている機能や挙動をもっているものがあります。そうなるとソフトウェアの設定も変更しなければならない・もしくはしたい場合があります。設定を変更するにはこれも自らコンパイルすることになります。
このようにカーネルやソフトウェアを設定していくことで、自分にとって最適な環境をつくりあげることができます。
目的がなければなかなかGentooLinuxを使いこなせはしないでしょう。ましてや初心者が最初に選ぶべきディストリビューションではありません。
GentooLinuxではインストールの手間や時間を差し置いてでも、「ユーザ自身での最適化」に重きを置いたディストリビューションなのです。
ちなみにGentooはアデリーペンギンの一種であるジェンツーペンギンから拝借した名前だそうです。
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GentooLinuxを使う利点
- カーネルの設定やソフトウェアの設定を自分で行うことができ、最適化を図れる
- カーネルパラメータの勉強になる
- インストールや使用に際してユーザ自身での設定を行う必要があるのでLinuxの勉強になる
- 多数のアーキテクチャに対応しているのでほとんどどんな環境でも動かせる
LFS (Linux From Scratch)
えるえふえす りなっくすふろむすくらっち
Linux From Scratch
http://linuxfromscratch.org/lfs/index.html
ディストリビューションと呼んでいいのかという話もありますが、Linuxを使う上でおそらく究極的なディストリビューションです。
このディストリビューションの目的は「1からLinux環境を作る」ということです。いうなればディストリビューションを自分で作るということです。
このディストリビューションでは何かのツールやパッケージが提供されているわけではありません。提供されているのは環境構築のガイドであるドキュメントだけです。
そのドキュメントを参考にしながらLinux環境を1からつくるのがLFSです。
GentooLinuxもソースコードのコンパイルを行うなど、ユーザ自身がするべきことは多いディストリビューションですが、LFSの場合、カーネルをコンパイルするための環境やツールも自ら用意しなくてはなりません。
もちろんカーネルパラメータの設定もすべて自身で行いますし、パッケージ管理ツールなどはありませんから、導入するソフトウェアの設定やコンパイルも自身で行います。
ここまでくると初心者のみならず、ある程度Linuxを使ってきた人でも困惑するレベルになるでしょう。
しかしLFSの真の目的は「Linuxへの深い造詣の獲得」です。
もちろんLinux環境を1から作るなど一筋縄ではいきません。とにかく失敗の連続になるとおもいます。わからないところは調べなくてはなりませんが、多くの場合英語情報ですので、日本人にとってはそこも壁になるかもしれません。
もしLFSを実行して実用レベルのLinux環境を作り上げることができたなら、そこにはLinuxに対する深い造詣(と英語が読めるようになっているかも)が獲得されていることでしょう。
もはや修行ディストリビューションともいうべきLFSですが、目指すべき到達点なのかもしれません。
LFS (Linux From Scratch)を使う(作る)利点
- Linux環境の深い造詣を得ることができる
- とにかくすべて自分色に染めることができる