大きな地震が来る前に発信される緊急地震速報。
いきなり音がなるのでとてもびっくりしますが、地震に対する身構える時間を与えてくれもするのでとても便利な仕組みです。
しかし、なぜ揺れが来る前に速報を発信することができるのでしょうか?
地震では振動が伝わってくる
地震は地下の岩盤が崩れたり、滑り落ちたりする時に発生します。
これらが発生する時当たり前ですが、振動が発生します。
地震の揺れは簡単に言うとこの振動が地殻を伝わってくる現象です。
振動は波として考えることが出来ます。つまり地震は地殻を伝わってくる波なのです。
この波にはいくつかの種類があることがわかっています。
例えば楽器を鳴らした時にも音波には多数の波の成分が含まれていて音の個性がでるように、地震の波も複数の波が合わさって伝わってきます。
地震の波にはP波とS波という波があります。
波のイメージは以下の画像と動画を参考にしてください。
P波はPrimary wave(第一波)もしくはPressure wave(圧力波)の略です。この波は縦波と言われ、波の進行方向に並行な揺れ方をします。
S波はSecondary wave(第二波)またはShear wave(剪断波)の略です。この波は横波と言われ、波の進行方向に直角な揺れ方をします。
地震の本格的な揺れの原因はS波になります。
波の速度には差がある
実はP波は岩盤中でS波より倍くらいの速さで伝わります。P波はおおよそ5〜7km/秒くらいで伝わり、S波は3〜4km/秒で伝わります。
例えば震源から50kmの場所では、P波は遅くても10秒くらい、S波は速くても12〜13秒くらいかかります。
つまり本格的な揺れを引き起こすS波よりもP波の方が先に到達するのです。
P波を調べるとS波が予測できる
先に到達するとはいえP波も同じ震源から発せられた波で、震源の大きさによって強さが決まります。そのためP波の強さを調べることであとで届くS波を推定することが可能です。
このP波解析を気象庁で行ってS波の規模を予測し、緊急地震速報を発信しています。
この計算はさまざまな条件を組み込む為、非常に複雑ですが、現在ではもちろんコンピュータをつかって自動算出しています。
速報発信までの猶予はあまりない
P波がS波より速く到達するとはいえ、その差は数秒程度である場合がほとんどです。この数秒の間で観測・計算・発信を行う必要があります。
そのため緊急地震速報は高速通信インフラの存在がなくてはならないものになっています。
- 観測情報を収集する際の通信
- 観測情報を元に計算するコンピュータのネットワーク
- 演算情報を速報として発信する通信
できるだけ遅延を少なくし、少しでも速く発信するために大きな労力とインフラが使われています。
またテレビや携帯電話で緊急地震速報を受信できるのは、各事業者が緊急地震速報を利用者に受信できるようにインフラを構築している為です。
特に携帯電話の場合、数千万人規模に同時に緊急地震速報を発信しなければならないため、非常に高度な通信インフラが構築されています。
緊急地震速報は当たらない?
「緊急地震速報が来たけど、ぜんぜん揺れなかった」という場合もあるかもしれません。
明らかな誤報を除いても、緊急地震速報の正確性はそれほど高いとは言えないかもしれません
しかし緊急地震速報の性質上、正確性よりも速報性が優先されています。
正確性を期するあまりS波が到達してしまっては緊急速報の意味が無いからです。
予測したけど揺れなかったという事態はほとんど被害はありませんが、予測しなかったけど大きく揺れたという事態が起きたら目も当てられません。
S波を推定する計算は絶対的にただしい答えが出るわけではありません。
岩盤の状態や震源の深さでもいろんな場合があります。計算で算出される値はあくまでも推測値であり予測です。
また直下型の地震の場合などはほとんど差がなくP波S波がほぼ同時に到達する場合もあります。
そのため緊急地震速報での予測震度にはならない場合もありますが、年々研究が進められており、速報精度は向上しています。
まとめ
緊急地震速報は地震の波の特性を利用して本格的な揺れが来る前に、速報を出すシステムです。
揺れが来るまでの猶予は数秒程度しかありませんが、数秒あれば火を消したり、家具を抑えたり、ドアを開けたり、避難の準備をしたりといろいろなことが出来ます。
こういった数秒の余裕で命が助かったり、被害が小さくなったりします。
緊急地震速報の仕組みを理解して有効に使いましょう。